私の幻想は中世にしかなさそうだ。しかし、当時にタイムスリップしたら、過酷極まりない動物以下の暮らししか許されぬだろうから、矢張り安穏な現代から夢想するに莫如。だから中世幻想なのだね。中世ならば、和のものも嫌いではない。
本来メディチ家の発注で、海賊に強奪され今に残るこのハンス・メムリングの「最後の審判」を、折角ベルリンに行くのだから、グダニスクにまで足を伸ばして見に行こう、そう気楽に考えていたら、ポーランドのグダニスクまで夜行寝台で行かねばならぬと知り、清く諦めた。
ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの「最後の審判」を見る目的だけで、パリからボーヌに二泊小旅行をしたのは早二年前。ゲントに「神秘の子羊」を見に出掛けたのが一年前。更に再度のブリュージュ詣でが半年前だ。日本に絶対来ない係る大物作品をさなから巡礼の如く訪ねる旅。大英博物館にもルーブルにも毎回行くに決まってるし、ベルリン美術館も勿論楽しみだが、今年はこれ一点の大物見物の予定が決められぬ。コルマールにグリューネヴァルトを見に行くか? ちと遠いな。ううむ、いいアイデアがない...。