「ああ、忙しい忙しい。」兎の後を追っている訳もないのに、全く気が休まらない。元々あまり足下を見ず遠望ばかりしているので、絵を描いている時でさえ、別のものを見ているのかも知れない。
何を見ているかって?これです。
毎度の如く、冗談ポイ!
とは言え、この12月に滞在予定のパリのアパルトマンを日夜探していたので、当たらずとも遠からず。今回は極めて重要な展覧会をプロデュースしている関係上、略二週間以上パリに居詰めになる。従って毎度の欧羅巴周遊の美術館観光は潔く諦めねばならず、オペラガルニエでバレエを観たり、フォンテーヌブローの城廻り程度の遊興しか許されぬ身。故に只管居心地のいい隠れ家をと思う次第。滞在中は、絵描き営業を兼ねた社交やあちらのアーティスト達の家に招待されたりと濃厚な日々となる。パリ滞在も回を重ねる度に昔日住んでいた30年以上前の時制に戻っていく感じだ。
そう、二十歳の頃の私は、毎日のように文学者だ、音楽家だ、画家だのの許に往来していたのであった。売名行為になるので名は伏せるが、彼等は結構著名な人々だった。彼等には当然決定的な影響を受けた。そして雀百迄踊り忘れず。相変わらずそこで得た価値観を生き続けている。今にし思えば、日本で学んだことは殊アートセンスに関してだけは、唯の一つもないようにすら感じる。