ANAの機関誌『翼の王国』を何時も空の上で読んでいるが、その連載だった分子生物学者の福本伸一著『フェルメール光の王国』が一書に纏められたので、早速購ってきた。
年に二三回の私の海外旅行は五年程前から始められたので、フェルメールの作品を全て現地に取材する、というフェルメール詣でに四年の歳月をかけたという福本伸一氏のこのエッセイは、丸ごと私の旅の友のようですらあったと感慨する。もとより私の旅は、幻想芸術のオーガナイザーとして公私に渡る展覧会の仕事を兼ねてであったので、純粋に美術館巡りを目的とした行楽とは申し難いが、福本伸一氏が目にした作品の一部は私の目にも収まっている。
最初に見たのはこの『絵画芸術』をウィーン美術史美術館に私の長男と二人旅でであった。ウィーン幻想派後継世代の最右翼、
ルイジ・ラスペランザのアトリエギャラリーを訪問するのが旅の主たる目的だった。四年前の事だ。その後妻と再度彼の店を訪なったが、思えばそこまでして彼を本邦に紹介したい思いに駆られてのことだった。後に京都に彼を迎えたが並み居るウィーン幻想派後継世代にあって、彼以外は取るに足らぬ才能だと今も確信するのである。