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絵描きが未完成画を見せるのは露出症である。
昔、池袋のびっくりガードから東口に抜ける階段で、本物の露出症者と出会ったことがある。それは如何にもそういう嗜好を持ちそうな、むくつけき男ではなくて、若く、ちょっと陰のある綺麗な男であった。深夜ではあったが、オレンジ色の街灯で煌々と照らされ、春めいたベージュのコートを階段を登り切った場所に弧を描いて広げ、仰向けで桃色の全裸の姿。マンテーニャの「死せるキリスト」の逆遠近法のポーズで横たわっていたのだった。 彼には済まないが、私は絵描きなので、人のヌードには慣れ切っている。そこがびっくりガードでも、決してびっくりなどしない。暫し立ち止まって、観察した。相手は薄目を開けてこちらを窺っていたようだが、敢えて彼の頭の方へ回りこんで私の姿を見えなくし、どこまで私の視線に耐えられるか試してやれ、と佇んでみた。 五分以上彼はまんじりともしなかった。よく耐えたものだ。照明も抜群、階段下からは死角となって、登って来る途中、彼の存在は全く知覚されない。当時芝居にも手を出していた私は、実に周到な演出だね、と軽犯罪にも拘らず感心したものだった。 深夜で人通りなどなかったが、階段の下の方に人影がちらっと見えた。ここに居続けると私も誤解されかねない。通りの方へ早足で向う背後から「きゃっ!」と若かろう女性の声が追いかけて来た。頭のなかで、何故か「窃視症」なる言葉が渦巻いて、後ろは振り向かなかった。 『春の嵐』(木製パネルにテンペラ+油彩)<2014.4.20現在/未完成> 上掲の絵に伴う私のFacebookからの引用。 <絵描きのくせに、文章ばかりに夢中になって!とお思いの方も居るでしょう。そう、少なくとも私はそう思います。ちょっと煮詰まっていたのです。で、こういう時は、私の耳元で悪魔と天使が代わる代わるやって来て、囁きます。「どうせまた仕上がらないんだろ?やめちゃえ!やめちゃえ!真面目にコツコツなんか」と悪魔。「ダメダメ、根があって、幹があって、枝葉があって、花や実がつくのよ!きっと報いられるわ」と天使。 窓外を見ると、折角咲いた桜が春の嵐で散りまくって、痛々しい。若木に較べ、老木はここを先途と沢山の花を抱え、故に嵐をまともに受けてしまったようだ。 環境変化に追いつけぬのが、老いの哀しさ。 悪魔が勝った。己自身が嵐となって、臆病者を素っ裸にして吊るしてやる!ということで、途中迄描きかけた、予定調和な詰まらぬ絵を壊しまくり!! もう発表まで一ヶ月を切った。どうなる私?そして私の絵...。>現在発表まで10日あまりとなったが、全く進展していない危機的状況。
by shojitanaka
| 2014-04-20 06:35
| essey
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